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僕は予備校生。お隣に住んでいるマキちゃんは、僕の住んでいるアパートの持ち主…大家の娘。
…ていうか、あたりの土地を持っている地主の娘。
お金持ちの家に生まれたせいかまぁ、我が儘なことと言ったら…。
僕が勉強していると、いつも遊びに(邪魔しに?)やってくる。
彼女の父親は厳しい人なんだけど、彼女が僕のことをどう言っているか、えらく覚えがめでたい。
まぁ、それもプレッシャーなんだけど…ね。
「マキちゃんさ、僕じゃなくて、T大生とかに教えてもらえば?」
「なんで?」
「だって…現役の方がアタマいいんじゃない?」
「大学生なんて、入試しか勉強しないからダメよ」
「予備校生の方が、よっぽど勉強してるって!」
ニコニコしながら、肩をバンバン叩かれる…励ましているのやら、イヤミ言われているのやら。
しばらくして、マキちゃんが僕の顔をじっと覗きこんできた。
「…なに?」
「何か気づかない?」
「何って……?」
僕がそう言うと、マキちゃんが不満げに唇を尖らせる。
「んもう、お部屋、キレイになってるでしょ?」
「えっ…そういえば……」
「お掃除してあげたんだよ」
と、得意げなマキちゃん。掃除って……。
「えっ?い、いつ?」
「今日」
「お兄ちゃんが予備校に行っている間に」
か…勝手に入ったのか…って、大家の娘だもんなぁ、鍵がすぐ…。
…まさか。無意識に、目線が本棚に行った。
それを遮るように、マキちゃんがぬっと顔を出す。
「あ、あの……さ」
「ンフフ…お掃除してたらさ」
「…いー、もの見つけちゃった」
目を細めて僕を見つめるマキちゃん。その表情は、天使って言うより、むしろアクマ…。
…このときから、僕の運命は大きく変わっていったのだ。
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