STORY |
佐々木忠は、上司の罵声を浴びていた。 そこそこ仕事のできる女だが、管理職には決して向かない人間だ。 頭を下げた忠は、だがその目線だけ、女の胸元へと向けた。 大きな胸が、たぷんたぷんと揺れている。 この肉体だけは価値がある。モリモリと腹立たしさばかりが膨れていく。 帰宅途中、ふと大きな屋敷の前を通りかかると、表玄関の前に黒尽くめの車が止まった。 車から降りてきた男は七飯賢悟……息子のほうだ。 親子三代で代議士というサラブレッド出迎えた女性を見て口をつぐみ、わが目を疑った。 この街に来る前、忠が実家に住んでいたころ、近くに住んでいた地元の名士の娘じゃないか!? その『あこがれの隣のお姉さん』だった女性─── 玖玲亜が、いま屋敷の前で、七飯賢悟を出迎えていた。 左手の薬指に、指輪が光っている。貞淑な妻の顔で、玖玲亜が屋敷の中へ消えていく。 その尻は、昔以上に魅力的に膨らんでいて、ふるんふるんと揺れていた。 忠の中の腹立たしさに嫉妬が加わり、さらに膨らんだ。もう我慢できない。 とっとと家へ帰って、なにか憂さ晴らしをしないと気が済まない。 忠は家路を急ぐ。が、またも懐かしい顔を見かけてしまった。 やはり実家の近くに住んでいた、つぐみだ。 昔、忠がよく一緒に遊んでやっていた、幼馴染のつぐみだ。 あのマンションに引っ越してきたのだろう。 つぐみに声でもかけようかと近づいた。しかし、その足が止まる。 つぐみと一緒に荷物を運ぶ好青年がいた。 そしてつぐみの左手の薬指に、指輪が光っていた。 |