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倫応学園の廊下を一台のストレッチャーが駆け抜ける。
そこに乗せられた青年―― 羽生一理(はぶ ひとり) は苦しげに顔を歪ませていた。
周囲にいる女学生たちは口々に彼の名を呼び、医師に安否を確かめる。
「先生、この人の病名は何です!? 癌ですか!? 白血病ですか!?」 「…………」
――いいえ、ボッチです。
話しは2ヵ月ほど前に遡る。新学期を迎え、新たな希望と活気に沸き返る学生たちの中、ただ一人沈鬱な表情を浮かべる青年がいた。
彼の名前は、羽生一理。 倫応学園2年生。知力優秀。運動神経優秀。しかし―― 友達0。
微妙にウザい性格か、それとも微妙に一言多い性格か、あるいは悪意があるように思えるほど素直な性格からか――
はたして卒業までに友達はできるのか…… 彼の口から重い溜息が漏れたとき、携帯電話が鳴り響く。それは実家の父からだった。
何があったのかと電話に出れば、父曰く―― 嫁……正確には嫁候補を見つけたらしい。
彼女はすでに倫応学園に入学しており、一理が婿にふさわしいかどうか観察中とのこと。
ともかくがんばれと父が電話を切った後、一理は嬉しいやら驚くやら呆然とする。
なんにせよ自分を気にかけている人がいる―― 自分はもう一人じゃない!
そんな狂喜する彼の前に、一人の女学生が現れる。 こいつが嫁!? いや――間違いなく、嫁だっ!
一理がその手を握り締めれば、彼女は頬を染め、恥ずかしげに微笑むではないか!
だが―― その様子を物陰から見つめる4人の女学生。
さらに数年ぶりに開かれることになった学園祭の開催と運営に、一理は巻き込まれることになってしまう。
はたしてボッチと5人の嫁候補の運命は――?
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