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プロローグ【とある兄と妹の過去】
両親は自分が小さな頃にこの世を去っている。
小さな頃は仲の良かった妹がいた。
悲しかったけど、そうも言ってられなかった。
いまいち状況を理解出来ていない妹を見ると、兄の自分がしっかりしなければと…。
しかし、子供のそんな覚悟なんてなんの役にも立たなかった。変化する状況に流され、引取先が決まるまで近所の人に支えられながら数日を二人で過ごす。そして訪れる別れの時。
守ると決めていたのに何も出来なかったことを悔やむ兄。別れる間際、最後に一つ約束をする。
「もしも大人になって嫌なことがあったらお兄ちゃんを頼れ! 絶対に助けてやるからな!」
「うん、約束……っ」 小指を絡ませ指切りをする兄妹。指切りが終わるとお互いに泣きながら別々の道へ。
【そして時は流れて〜妹との再会】
近くにある大学に通っていて、この春から2年生。今は春休み中で特にやることもなく暇を持て余している。
「でも久しぶりに妹の夢を見たな」と、ぼんやりと夢の内容を思い出す。10年くらい前に離れ離れになってしまったけど元気でやっているだろうかと物思いに耽る兄。
そうこうしている内に気づけばそろそろ夕方になろうかという時間に。夕飯を買いに商店街へと向かう行きがけに可愛い女の子に出会う。
「なんだか妹に似ている気がする……」
妹の夢を見たせいでそう感じるだけかも…。
遠ざかっていく女の子に別れの日の妹の姿が重なり、なんだか胸が苦しくなる。
帰り道の途中、角を曲がったところでさっき見かけた女の子とばったり出会う。
戸惑う兄をよそに、こちらを見ながら驚いた様子で「お兄ちゃん……?」と女の子。
その声と響き、何よりお兄ちゃんという言葉で別れて暮らすことになった妹だと確信する。
雨が降っていることも忘れてお互いに見つめ合う2人。そうしていると女の子の目にじわりじわりと涙が溜まっていき、ついにはポロポロと泣き出してしまう。
小春「う、ううん……お兄ちゃんに会えたのが嬉しくて……」 雨脚が強くなってきたのでとりあえず妹を自宅に連れていくことに。兄に心配をかけまいと少しずつ疎遠になるようにしたが嫌われないかとかいろいろな不安が募ったのか…。
妹の気持ちを知った兄はもう一度自分で妹を守ることを誓い、二人は今まで離れていた分一緒にいる思い出をたくさん残すために踏み出すことになる。
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